いま、会場に何人いるの?~エッジAIカメラを活用したポートメッセなごやの入場者数の常時把握~

本レポートは、課題提示型支援事業の1つ、新型コロナウィルス関連課題「大規模イベント会場内滞在人数の即時計測システム〜ウィズコロナ時代における安心安全なイベント開催を目指して〜」の実証レポートです。

(MERRY ROCK PARADE 2021の様子)

「あーあ、そろそろライブに行きたいなあ。スポーツ観戦もしたいなあ。」

コロナ禍以前は熱心にたくさんの人が集まるイベント会場へ足を運んでいた人の中には、こんな風に感じている人も多いかも知れません。感染拡大が収まっていた時期には規模の大きなイベントもある程度行われるようになりましたが、まだまだ以前と同じようにはいかないというのが実際の状況です。

そこで、名古屋市では、多くの人が集まる大規模イベント会場(ポートメッセなごや)で、国の制限による人数制限が行われている状況下でも、的確に入場者数の管理を行いながら「安心・安全なイベント開催」が実現できるよう、最新の技術を用いた社会実証を行いました。

観光文化交流局MICE推進室とIntelligence Design株式会社(以下、「インテリジェンス・デザイン社」という。)は、AI搭載カメラに小型コンピュータを取り付け、撮影した映像を基に会場に出入りする人数をAI(人工知能)がどの程度正確に計測できるかという課題に取組んでいます。

(左:会場出入口上部に取り付けた様子 右:片手で持てるぐらいの大きさ)

インテリジェンス・デザイン社(本社:東京都渋谷区)は人工知能(AI)を使って映像を解析することで、交通量調査から文字認識など多岐にわたる分野への活用に取組んでいるスタートアップ企業です。機器や集計画面のデザイン、操作性等から、最先端の技術を親しみやすい形で社会に提供しようとする姿勢が感じられます。

従来の大型イベントでの人数把握方法としては 1)手動カウンターによる計測 2)電子チケットなどによるチェックイン数の計測 などがあります。しかしながら、人件費やシステム利用料などの費用面に加えて、出入口が複数あるなどの理由でリアルタイムに滞在人数を把握できないという課題がありました。今回、実証に用いたシステムは設置が比較的容易なうえに、計測データをリアルタイムでクラウド上に集約するため、情報の把握も容易です。

(出入口天井に取り付けられたカメラ)

計測方法は出入り口に据えた1台のカメラで『入るひと』『出るひと』の人数をそれぞれカウントするというもの。AIが動く人影を認識して、入退場の境目を越える方向を判断します。『入るひと』から『出るひと』を引いた差分を足し合わせることで『いま会場内にいるひと』の人数を算出します。10月に比較的小さなイベントで試用的運用を行い、会場内に滞在する人数が正確にリアルタイムで計測できることを確認しました。

( PC画面上でクラウドに送られた計測データ、滞在人数をリアルタイムで確認(イメージ写真)個人情報の観点などから映像データはアップロードせず、カメラ内で人数を判断した後に結果データのみをクラウドに送信しています)

そして迎えた12月18-19日。ポートメッセなごやで行われるイベントの中で最大規模のイベント『MERRY ROCK PARADE 2021』でも計測を試みたのですが…。入場時の計測は正確に行えましたが、数千人の観客たちが一気に退場する際には人影が重なるなどの理由で一部計測できない状況が見られました。

社会実証は最新技術を用いることで、課題が解決できるのか試してみるというチャレンジングな取り組みですから、必ずしも最初から好結果を生むとは限りません。2022年1月現在、カメラの設置位置を高くして人影の重なりを少なくし、ソフトウェアの改良により精度を上げるなどの努力を積み重ねて、残りの実証期間中にさらに2,3回のイベントで計測を行い、年度末には報告書をまとめる予定でいます。

一日も早く皆さんに安心・安全なイベントを楽しんでいただけるように――。

今後も精度の向上に励みます。


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