実証事業者:株式会社インテージテクノスフィア
フィールド:名古屋市内某商店街
実施期間:2022年5月13日〜14日
実証実験に取り組む背景
交通センサスのAI化が話題となる中、人流解析領域においてもデータを活用した施策検討が求められるようになり、様々なまちづくりの前後でデータとして実態を捉えようという社会背景になっている。
従来の断片的な人数調査ではなく、人がどこからどこに移動しているか流動的な実態を把握したいニーズが生まれてきた。
2021年度に課題提示型で行った実証実験では、複数カメラでの人の検出が一定の制度で計測可能となったが特定条件下における計測制度では、量的計測と回遊性計測の課題が残った。
Hatch Technology NAGOYA 2021での実証実験内容はこちら↓
実証実験の目的
・複数カメラのマッチング精度の向上
・全数による精度検証
また、フィールドからの要望があったうちの上位2点を検証します。
・まずは機械の数値がファクトであるか?を証明してほしい。
・店舗来店率、商店街滞留時間などを常時計測/可視化をしたい。
・母数に対する商店街の利用目的が知りたい
・商店街の通行人の属性を把握したい
実証実験内容
商店街の入口となる部分に起点となるカメラを設置し、抜け道となる道路、出口と合計4台のカメラを狭いエリアに設置します。起点のカメラに映った人物がどこを通って行ったか、他3つのカメラから判定します。
起点カメラ、
商店街を抜けて左折する人を捉えるカメラ①
店舗前に設置した入店者を捉えるカメラ②
商店街を直進する人を捉えるカメラ③
複数カメラに映った人物が同一人物かどうかをマッチングする方法は、起点カメラに映った人物にIDを付与し、2分以内に他に配置されたカメラを通過した人物が同一人物かどうかを服装の色の特徴や類似性だけでなく、地理的・時間的近接性を用いた独自モデルの学習を利用して判定します。
この判定結果が正しいかどうかを確認するため、カメラの映像を記録し、記録されたデータから改めて数百人/時間×10時間以上の規模で検証し同一人物かをチェックすることで、正解データとし学習モデルの結果と比較をします。
また、調査員を配置し人間が行う流動調査結果も、正解データと比較を行うことで人間の流動調査とAIカメラでの流動調査の誤差を比較します。
比較するデータは以下の2つです。
・起点通行人数の合計
・時間帯別(30分ごと)の方向別の計測人数
実証実験の結果
服装や特徴から起点カメラではさしていなかった人物が別カメラで傘をさして顔が隠れている状態で歩いていても同一人物の判定や自転車での通行者も同一人物の判定が可能であり、方向別人流カウントの把握は誤差数%〜30%程度の制度を実現した。
起点通行人数ベースのカウントでは時間帯ごとの人流増減を制度良く捉えていて、1日全体では10%前後の誤差率となった。
一方、同一人物にマッチングがうまく行かなかった例としては
・バイクで移動していたため速度が早く映像にブレがある場合
・カメラに近すぎたり人物が重なってしまい特徴量を十分に捉えられない場合
などがあった。
調査員による正解データに比べてAIの方向別人流カウントの方が多くなる傾向が滞留者のカウントで多く見られたが、その原因としては以下の点が考えられる。
・計測対象でない人をカウントしてしまう
・起点と終点で人物マッチングが出来なかった場合に滞留とカウントした
・調査員のカウントから漏れてしまった人もカウントできている
実証実験のまとめ
・まちなかウォーカブルの取り組みが各自治体で加速化し、従来の断面通行量に加え、人の移動実態を面で捉える必要が出てきている。
・商店街においても売上向上のために商店街内の導線や店舗入店率を可視化することで、実態把握や施策後効果検証を行う必要がある。
今後の展開
AIモデルをAIカメラに搭載することで、中長期的に解析できる仕組みを構築し、各種施策の効果検証ができる状態を構築する。