実証事業者 有限会社来栖川電算
市担当部署 スポーツ市民局 消費生活課、交通局 駅務課
Hatch Technology NAGOYA 課題提示型支援事業の実証について、実証の成果をまとめた記事になります。
1.プロジェクトの背景・課題
名古屋市では、エスカレーターの安全利用に関する条例を制定し、立ち止まって乗ることを義務化。しかし立ち止まって乗る人は約2割程度である。
右側を開けて乗る習慣が根強く、右側に乗る人は7%程度。エスカレーターでは左右関係なく立ち止まって乗ることを当たり前にする意識改革が課題となっている。
2.社会実証の内容
エスカレータの利用傾向の把握と、適切利用を利用者に促すことを目的とし、AIによる「エスカレーター利用行動収集システム」および「エスカレーター利用行動介入システム」を地下鉄伏見駅のエスカレータに一定期間設置した。
エスカレーター上を歩行する人や片側に偏って乗る人を検知し、スピーカーで注意喚起を行った。
それによって得られたデータをもとに、「システム自体の性能評価」と、「システムによる介入の効果」を検証した。
3.検証結果・効果
①今回の実証において実装した「エスカレーター利用行動収集システム」により、エスカレーターの「総利用者数」や「移動利用者数」をエスカレーター利用実態調査」と同等以上の精度(それぞれ検出率役99%、役97%)で、長期にわたり連続的に集計することが可能になった。
②「階段上での移動に対する介入効果」は大きく、歩行者数が約1万人から5000人に半減。歩行者削減に一定の効果が確認された。システムの導入により、階段上の移動者を半減させることに成功した。本システムを導入することで、エスカレーターの輸送効率を損なうことなく、エスカレーター事故のリスクの低減を図ることができる。
③片側偏重も7.8%削減。継続措置により更なる改善が期待される。
右側に乗る人の増加により、輸送効率をほとんど悪化させずに歩行者を減らすことができた。
利用者からも、安全意識の高まりや利用環境の改善に対する肯定的なフィードバックが得られ、プロジェクトの有効性が確認された。
メディアにも数多く取り上げられ周知・啓発につながった。
4.今後の展望・課題
①コストに関する課題
LiDARセンサなどエッジデバイスの価格が高い。記録したデータの回収や、システムトラブル時の対応など、オペレーションコストが高い。
②性能に関する課題
フィードバックが1~2秒ほど遅延してしまう。低頻度ではあるものの、誤ったフィードバックをしてしまう場合がある。
③フィードバックに関する課題
音声が高圧的で、利用者に不快感を与えてしまう。改善を継続しながら、他の駅への設置や長期間の設置など継続して実証し、有用かつ導入しやすいシステムにしていく。
本格導入に向けて2024年度も実証を継続する。
5.実証事業者について
有限会社来栖川電算
代表取締役社長 佐藤 太亮
設立 2003年2月27日
本店所在地 愛知県名古屋市中区