市民の野菜不足を解消したい!行動変容を生み出す栄養管理ツールの開発

健康福祉局健康増進課

要点

解決したい課題

名古屋市民の野菜摂取量が目標値を大きく下回っている。市民が自身の野菜摂取量を知ることで、野菜摂取に向けた行動変容につなげたい。

実現したい未来

  • 朝食を毎日食べている市民の割合が増える
  • 栄養バランスを考えた食事をする市民の割合が増える
  • 市民の野菜摂取量が目標値に近づく
  • 市民が積極的に野菜を摂取するようになり、健康に過ごすことができる

想定する実証検証

  • 日常生活の中で手軽に野菜摂取量を知ることで、野菜摂取への意識や行動が変化するかを検証
  • 継続的なアプローチで、行動変容やモチベーションの維持を図り、野菜摂取量を国の目標数値まで上げられるか検証

得られるもの

健康増進事業として広く活用できるため、他の自治体や企業等に導入される可能性がある。

ストーリー

市民の野菜不足を解消したい!行動変容を生み出す栄養管理ツールの開発

「野菜をもっと食べましょう」

 誰しも一度は言われたことのある言葉だと思います。皆さん、そう言われた後に野菜を食べるようになりましたか?

人の行動を変えるのはとても大変なことです。それが良いことだと分かっていても、誰かに一言言われただけで変えられる人は少数です。

自分が実際にどのような状態にあるかを知ることで初めて、その言葉の意味を考え、行動を変えるきっかけになるのだと思います。私たち健康増進課は、市民の方に、そのきっかけを提供したいと考えています。

野菜摂取量全国ワースト1位

 「健康日本21」において、国は、野菜摂取量の目標値を1日350gとしています。

しかし、平成28年度に実施された、「国民健康・栄養調査」の結果において、都道府県別の野菜摂取量では、愛知県は男性が最下位、女性が下から2番目の順位となっており、国の定めた目標値を大きく下回りました。

 

野菜摂取量の平均値(20歳以上、性・都道府県別、年齢調整値) (平成28年国民健康・栄養調査報告より)

 

野菜不足の原因としては、日本人の食生活の変化(洋食化、外食の増加)、食事回数の減少(特に朝食の欠食)や栄養バランスを考えた食事への意識の希薄化といったものが考えられます。

食育の限界!?肝心の20代へのアプローチが足りていない

 名古屋市では、これまで様々な手法で食育の推進に取り組んできました。

令和元年度に「食育に関するアンケート調査」では、特に若い世代で、朝食の欠食や、栄養バランスを考えた食事を実施している方の割合が低いなどの課題が明らかになりました。

 

朝食の摂取状況(性・年齢別) (名古屋市食育推進計画(第4次)(全体版)より)

  

栄養バランスを考えた食事の実践状況(性・年齢別) (名古屋市食育推進計画(第4次)(全体版)より)

 

これらの現状を踏まえ、「名古屋市食育推進計画(第4次)」に基づき、保育園児や小中学生への食育、保健センターでの相談事業やウェブサイトを使った啓発活動といった従来の取り組みに加え、SNSを活用した普及啓発をはじめとする新たな手法をとりいれた事業を進めています。

ただ、最も食に関する課題が顕著にみられる20代は、なかなか市の広報やイベントが届かず、効果的なアプローチが未だ十分にできていません。

また、現在の本市食育関係事業の一つの「より実践につながりやすい効果的な食育指導」では、野菜摂取量推定機器を保健センターやイベント等で実施する食育指導において活用しています。 令和3年度に本市が機器体験者に行ったアンケート調査では、機器を使用した方は、野菜を摂取しようとする意識や今後も自分の状態を確認したいという意識が向上したという結果がでています。

ただ、現時点では、機器が活用できる機会は非常に限定的ですし、また自分が取り組みを一定期間行った後に、再度状況を確認したいと思っても、機器が常設されているわけではないので、なかなか確認の機会がないという課題があります。

 

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機器体験者に行ったアンケート調査の様子

知るだけでなく行動変容につなげたい

 そこで、自宅や職場など日常の場面で、手軽に自分自身の野菜摂取量を知る方法がないかと私達は考えました。

日常生活のなかで、手軽に、対象者が自身の野菜摂取量を知ることによって、野菜摂取への意識が変化する。そして、継続的に状況把握することで、改善するために朝食の摂取や栄養バランスを意識した食事といった、より健康的な行動をするようになり、また体調の良さを感じてモチベーションの維持ができる。

特に健康無関心層や20代など若い世代が自身の野菜摂取量を知ることによって、野菜摂取への意識は変化するのかを実証したい、と私たちは考えています。また可能であれば、対象者の継続的な状況把握することで、改善のための行動変容やモチベーションの変化などを確かめたいと思っています。

私たちが実証の半年で達成したいラインは、「対象者が自身の状況を知ることで、改善のための行動変容がなされ、野菜摂取量が以前より増えて国の目標数値に近づいている」というものです。

 

市民のみなさんの健康的な生活のために

 市民の皆さんは、忙しい日々を送っています。食事の内容を気にする余裕もないかもしれません。

そんなとき、ふとしたことで自分の野菜摂取量を知る機会を得られる。それは、体重計に乗るような感覚で自分の状況が確認できる機器、あるいは野菜不足や足りない食材を教えてくれるアプリのようなものかもしれません。

それをきっかけに、 「そういえば、野菜摂取量が足りてなかったな・・・。」 「今日は野菜もとってみようかな。」と野菜が多く入っていそうな商品を探し始めたり、体調が改善していくことで継続的に野菜を食べるようになったり、そんな変化が生まれることを目指しています。

もしかするとまだ技術的に難しいこともあるのかもしれませんが、ぜひ一緒に実現していただける企業さんのご応募をお待ちしています。ぜひ私たちと一緒に、チャレンジしませんか。

 

募集要項

背景 2016年度(平成28年度)国民健康・栄養調査において、愛知県の野菜摂取量は全国平均よりも大幅に低いということが明らかになった。また、健康日本21において、1日の野菜摂取量の目標は350gとなっているが、その数値にも達していない。
一方で、成人の場合、野菜を1日350g以上、果物を1日200g程度食べると、体に必要なビタミン、ミネラル、食物繊維をとることができるとされており、野菜摂取量を増やすことは健康であるために重要と考えられる。
課題(詳細) 名古屋市が2019年(令和元年)に行った食育に関するアンケート調査では、毎日朝食をとる割合が74.1%、栄養バランスを意識する割合が54.8%であり、野菜摂取の機会や意識の不足が野菜摂取が足らない一因として考えられる。
また、特に20代などの若年世代にその傾向が顕著であり、対象層を意識した訴求力のある取り組みを行う必要がある。
求める解決策
  • 自宅や職場など日常生活の中で手軽に対象者が自身の野菜摂取量を知ることで、野菜摂取への意識が変化する
  • また、継続的な状況把握ができることで、改善のための行動変容(朝食の摂取やバランスを意識した食事)やモチベーションの維持を図ることができる
  • 手法としては、スマートフォンやウェアラブルデバイスなどを想定しているが、その他の手法でも可
    ※機器の購入を伴うと全市展開がしづらいのでなるべく市民が持っているもので対応したい
発展的な要素 同様の課題を持つ他の地方自治体、企業など広い範囲において、展開可能。
想定する実証実験内容
  • 若い世代を中心として、可能な限り多い人数を対象とする
  • 加えて野菜摂取への意識変化や行動変容には時間がかかることが想定され、また継続的な状況把握のため、同一人物に複数回の実験が必要であることから、最低1か月以上の期間の調査を行いたい
  • 意識の変化と行動変容については、2回目以降の野菜摂取量を知るときに、簡単なアンケートを取ることを考えている。その際は、対象者の意識の変化と行動変容がなるべく具体的にわかる設問にしたい。(朝食摂取の頻度や、野菜摂取機会の回数など)
スタートアップに求める専門性
  • 対象者から取得したデータで野菜摂取量を把握できる技術
  • 日常生活で手軽に計測できるような機器、アプリの開発力
  • 対象者に行動変容を促す広報、企画力
プロジェクトの進め方打合せ方法 オンライン会議も利用しながら随時情報共有をしたい。
提供可能なデータ・環境等
  • 食育に関する事業の詳細、「食育に関するアンケート調査」の調査結果
  • 環境としては、各区保健センター、本市と協働実績のある大学栄養系学部
プログラム終了後の本格導入 実証実験の結果次第では、予算化の上、全市で本格的な展開を図りたい。