株式会社中電シーティーアイ×緑政土木局橋梁施設課 (市内橋梁)
成果報告レポート
1. プロジェクトの背景・課題
本プロジェクトでは、橋梁の健全性診断を、より効率的かつ安全に実施する方法の確立を目的としています。現状、橋梁点検は「近接目視」によって行うことが基本とされており、点検者が高所作業車などを用いて橋の裏側まで目視で確認する必要があります。この方法は危険を伴い、作業負担も大きい上に、人手不足の中では持続的な点検体制の維持が難しくなってきています。
一方、他のインフラ(エレベーターや鉄道など)では、すでにセンサーやコンピューターを活用した自己診断技術が導入され始めています。こうした流れを踏まえ、橋梁分野でもIoT技術を活用した「人に頼らない診断手法」の可能性を検証しようというのが、今回の取り組みの背景です。
2. 社会実証の内容
今回の実証実験では、振動センサーを橋梁に設置し、車両通行時の振動データを常時取得することで、橋の健全性を間接的に評価する仕組みを検証しました。具体的には、センサーによって収集された振動波形をクラウドに蓄積し、そのデータを用いて異常検知や変化点の特定を行う分析手法を採用。従来の「壊れたときに発見する」点検から、「予兆段階で変化に気づく」ような診断アプローチへの転換を目指しています。
実証にあたっては、名古屋市橋梁施設課とも連携し、実際の橋梁に機器を設置して一定期間にわたるデータ収集とモニタリングを実施しました。さらに、従来手法との比較や、運用上の課題抽出も並行して行いました。

3. 検証結果・効果
今回の取り組みにより、振動データの解析から橋の状態変化を定量的に把握できる可能性が示されました。特に、連続的に取得されたデータから「通常状態」と「変化の兆し」を判別するロジックは、橋の保全管理における新たな診断軸として有効であることが確認できました。
また、点検にかかる人的・時間的コストの大幅な削減や、作業員の安全確保といった観点でも効果が期待されます。高所作業車を使用する頻度を減らしつつ、客観的なデータに基づいた判断が可能になることで、点検業務の省力化と高度化の両立が視野に入ってきました。

4. 今後の展望・課題
今後は、得られた知見を踏まえてさらなる検証範囲の拡大を図り、橋梁ごとに異なる構造特性に応じたモデルの最適化や、異常検知アルゴリズムの高度化が求められます。また、自治体や道路管理者との連携を強化し、実運用を前提としたスキーム設計を進めることも重要です。
あわせて、振動センサー以外のIoT機器との連携や、AIによるデータ解析の自動化なども今後の可能性として挙げられており、インフラメンテナンスの現場におけるデジタル技術の実装に向けて、引き続き取り組みを継続していく方針です。
5. 実証事業者について
事業者:株式会社中電シーティーアイ
代表者:伊藤 久德
住所:〒461-0005 名古屋市東区東桜一丁目1番1号
URL:https://www.cti.co.jp/company/