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路面標示の“見えづらさ”をAIが自動で判定する【成果報告】

緑政土木局 道路維持課 × 株式会社スマートシティ技術研究所
成果報告レポート

1. プロジェクトの背景・課題

道路上の白線や矢印、横断歩道などの路面標示は、交通安全に不可欠なインフラです。しかし、これらの標示は風雨や経年によって劣化が進み、視認性が低下することで事故リスクが高まる恐れがあります。

これまで名古屋市では職員による目視点検を中心に路面標示の維持管理を行ってきましたが、劣化状況の把握に時間と労力がかかること、また主観的な判断に依存していたことが課題となっていました。

そこで本実証では、AI画像解析技術を活用して、劣化状態を定量的に評価できる手法の有効性を検証しました。

2. 社会実証の内容

本実証では、画像処理技術に強みを持つ株式会社スマートシティ技術研究所と連携し、ドライブレコーダー型の走行カメラ(GLOCAL-EYEZ)で撮影した路面標示の画像をAIにより自動判定する仕組みを構築しました。

AIは、画像から標示かすれを抽出し、鮮明さや欠損の有無などをもとに5段階で劣化度を評価します。さらに、位置情報と紐付けて地図上に可視化することで、補修の優先順位付けに活用できる形で情報を整理しました。

実際に市内の幹線道路および生活道路を対象に複数回走行し、得られたスコアと職員の目視評価との比較検証も行いました。

3. 検証結果・効果

本実証では、AIによる画像解析が路面標示の劣化を定量的かつ客観的に評価できるかを検証しました。市内の幹線道路・生活道路を対象にスマートフォンを使って路面標示を連続撮影し、AIにより自動で抽出・劣化度を5段階で評価する仕組みを構築しました。

検証では、AIの評価と職員による目視確認評価の整合性を比較した結果、実際の現場状況と一致していることが確認されました。これは緊急性の高い補修箇所の抽出において、有効な指標となることを示しています。

一方で、逆光、路面の水たまり、影や他車両の写り込みといった撮影環境の変動により、評価のばらつきが生じるケースもありました。こうした誤差要因に対しては、今後のAIモデルの改善や撮影タイミング・装置の工夫が必要です。

また、AIが算出した評価を地図上に可視化することで、劣化傾向を視覚的に把握することができ、補修の優先順位づけや年度ごとの維持管理計画への活用可能性も確認できました。

従来、職員の経験と主観に頼っていた維持管理の判断を、AIとデータで裏付けられる体制の構築に向けた重要な一歩となりました。

4. 今後の展望・課題

今回の実証によって、画像解析AIを用いた路面標示の劣化判定は、現場の業務負担を軽減しつつ、客観的な評価基準の構築に貢献する技術であることを確認しました。

今後は、撮影条件の最適化、AIモデルの継続的な学習と改善を進めるとともに、他の舗装インフラ(舗装のひび割れ等)への応用可能性についても検討していきます。

また、判定結果をもとにしたダッシュボードや施工管理ツールとの連携により、維持管理のデジタル化を一層推進していきます。

5. 実証事業者について

株式会社スマートシティ技術研究所
代表取締役 趙 博宇
設立 令和元年 8 月
本社所在地 東京都文京区向丘二丁目3番 10 号 東大前 HiRAKU GATE 402 号室
https://www.smc-tech.com/

ニチレキ株式会社
代表取締役 小幡 学
設立 昭和 24年9 月
本社所在地 東京都千代田区九段北四丁目3番 29 号
https://www.nichireki.co.jp/