
1. プロジェクト概要
本プロジェクトでは、手軽に使える振動センサを活用して橋梁の健全度診断の効率化を目指します。従来の目視点検に加えて、交通による振動データを解析することで、橋梁の内部状態や表面の損傷を効率的に把握する手法を開発します。
2. プロジェクトの目的
都市インフラの要である橋梁の維持管理において、効率的かつ正確な健全度診断は極めて重要な課題となっています。従来の近接目視による点検では、表面的な損傷は把握できるものの、内部の状態評価には限界があり、また点検作業自体に多くの時間と労力を要していました。
本プロジェクトでは、風や交通により絶えず生じている橋梁の微細な振動(常時微動)に着目し、この振動特性から橋梁の健全性を評価する新しい手法の確立を目指します。特に、周波数分析や非定常スペクトル分析などの技術を活用することで、橋梁の剛性評価や損傷検知の可能性を探ります。これにより、より客観的で効率的な診断手法の実現を目指しています。
3. 実証プロジェクト詳細
本プロジェクトは2024年11月から2025年3月にかけて実施します。実証実験は名古屋市内の複数の橋梁を対象に行われます。これらの橋梁は、構造や使用環境が異なる特徴を持っており、様々な条件下での検証が可能です。
実験では、橋脚と橋脚の中間地点の路側に振動センサを設置し、通行車両による振動データを収集します。収集されたデータには、ノイズ処理を施した上で、周波数分析などの各種解析を行います。特に、橋梁の剛性(強さ)や表面の損傷に対して現れる特有の振動パターンに注目し、複数の橋梁での測定結果を比較することで、健全度評価の指標となる特徴の抽出を試みます。
歩行者専用橋では、別途起震手法を用いて振動データを取得し、より広範な条件下での検証を行います。これらの実証実験を通じて、振動センサを用いた新しい診断手法の有効性を確認するとともに、実用化に向けた課題の抽出も行います。
本プロジェクトの成果は、将来的な橋梁点検の効率化だけでなく、予防保全的な維持管理への活用も期待できます。客観的なデータに基づく健全度評価が可能になれば、より計画的で効果的な維持管理計画の立案にも貢献できると考えています。