緑政土木局 自転車利用課 × 株式会社長大・チャリチャリ株式会社
成果報告レポート

1. プロジェクトの背景・課題
名古屋市では、自転車を日常の移動手段として位置付け、環境負荷の軽減や健康促進、安全性向上を目的に、自転車専用レーンの整備を進めています。しかし、整備の成果や効果を定量的に評価する手段は限られており、利用実態や走行行動の変化が十分に把握されていないという課題がありました。
そこで事業者と連携し、自転車の走行データを活用して、自転車レーンの整備効果を客観的に可視化・分析する実証に取り組みました。

2. 社会実証の内容
本実証では、都市交通・インフラ整備に実績をもつ株式会社長大と、名古屋市内でシェアサイクル事業を展開するチャリチャリ株式会社と連携しました。
チャリチャリ社のGPS搭載車両の走行ログを活用し、名古屋市内で整備が進められた特定区間において、整備前後の走行データを比較。走行頻度やルート選択の傾向を分析し、整備による行動変容の可視化を試みました。


また、時間帯・区間速度などの要因も加味しながら、データの時系列変化を可視化し、利用傾向の特徴を抽出しました。
3. 検証結果・効果
本実証では、自転車専用レーンの整備が市民の走行行動にどのような影響を与えているかを、GPS走行ログデータを用いて定量的に評価しました。
まず、整備対象区間における整備前後の走行データを比較したところ、整備後には自転車の通行頻度が増加し、特に通勤・通学時間帯の利用が顕著に伸びていることが確認されました。また、走行軌跡をヒートマップで可視化した結果、従来は歩道寄りに分散していた走行ルートが、整備後は自転車レーンに沿ったルートに集中する傾向が明らかとなりました。
この変化は、整備によって利用者が「安心して車道を走れる」と感じていることの表れであり、レーン整備が行動変容を促している有効な証左といえます。
また、時間帯・区間速度などの要因も加味しながら、データの時系列変化を可視化し、利用傾向の特徴を抽出しました。


さらに、時間帯・路線の平均速度・急ブレーキ発生状況からデータ分析を行い、日常利用者のほか、観光や回遊とみられる走行パターンの違いも明らかになりました。これは、今後の自転車施策や観光施策と連携した整備戦略の策定にも役立つ知見です。

今回の実証により、シェアサイクルの走行データは、都市交通における実態把握や政策効果の可視化に活用できる有力なツールであることが再認識されました。
さらに、利用者の属性を特定しない匿名データであるため、プライバシーに配慮した形で都市交通の分析に資する基盤が整備されたことも成果のひとつです。
4. 今後の展望・課題
今回の実証によって、自転車レーン整備の効果を走行データにより可視化することができました。今後は、他エリアへの展開や、日常利用者以外(観光・回遊等)の分析にも取り組み、より幅広い整備施策へのフィードバックに活用していきます。
一方で、シェアサイクル以外の自転車利用者(私有自転車等)の行動把握には限界があるため、今後はユーザーに着目し周遊性、周遊時の経路選択といった、他の分析手法も取り入れる必要があります。また、走行データの可視化結果を、市民や関係団体との共有に活用し、自転車施策への共感を高める広報・参画施策にもつなげていきます。
5. 実証事業者について
株式会社⻑⼤
代表取締役 野本 昌弘
設⽴ 昭和 43 年 2 ⽉ 21 ⽇
本社所在地 東京都中央区⽇本橋蛎殻町一丁⽬ 20 番4号
https://www.chodai.co.jp
チャリチャリ株式会社
代表取締役 家本 賢太郎
設⽴ 令和元年 7 ⽉ 26 ⽇
本社所在地 福岡県福岡市中央区⻑浜一丁⽬ 1 番 34 号 KBC 会館 2F
https://charichari.co.jp