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シェアサイクル×ビックデータ解析で自転車の利用実態を調査【実証レポート】

名古屋市では、自転車の安全で快適な通行を実現するため、自転車通行空間の整備を進めており、整備された空間がどの程度利用されているか、整備によって市民の利便性や安全性が向上しているのかの検証が必要となっています。

これまでの自転車通行空間の利用実態調査は、職員による手作業の交通量調査が中心でした。しかし、この方法では調査できる範囲や時間が限られ、全体像を把握するのが難しいという課題がありました。

そこで名古屋市では、株式会社長大およびチャリチャリ株式会社と連携し、自転車通行空間の効果や課題についてデータ解析を活用した評価検証を行いました。

ビッグデータでシェアサイクルの走行データを分析

本プロジェクトでは、シェアサイクル事業者であるチャリチャリ(株)が収集するGPS走行データと、建設コンサルタントである(株)長大のビッグデータ解析技術を組み合わせることで、広範囲の自転車利用状況を効率的に分析しました。

評価検証は、以下の 3 段階で実施しています。

1.面的な利用実態の把握

シェアサイクル「チャリチャリ」の自転車に搭載されたIoT機器と利用者のスマートフォンのGPSデータを活用し、市内中心部の自転車走行状況を数値化。地図上に可視化することで、どの道路が多く利用されているかを明確にしました。

2.⾛⾏データ解析による⾃転⾞通⾏空間の整備効果検証

近年整備された「堀川東線」を対象に、整備前後(2023年9月・2024年9月)の走行データを分析。さらに⽐較対象として、近隣の路線である「⼭王線」「江川線」「堀川⻄線」についても、同様に分析を⾏いました。4 路線の利⽤数を⽐較した結果、整備後に堀川東線の利用割合が増加していることがわかりました。

3.⾛⾏データ解析を⽤いた挑戦的な分析

(株)⻑⼤が有する独⾃の解析技術を活⽤し、上記とは別の観点での⾃転⾞利⽤に関するデータ分析にも挑戦しています。利用経路の可視化の際、走行速度や急減速の発生頻度もあわせて解析。急ブレーキの多発箇所など、安全対策の参考になるデータが得られました。このように、路線ごとの安全性や走行のしやすさを評価できるようになると考えており、技術検証を進めています。

プロジェクト説明会の様子

2月19日、名古屋市西区の「なごのキャンパス」にて、本プロジェクトの説明会が開催されました。説明会には、市の担当者、実証事業者、複数のシェアサイクル事業者、メディア関係者などが参加し、プロジェクトの成果や今後の展開について意見が交わされました。

説明会では実証事業者である(株)長大とチャリチャリ(株)より、データ解析の手法とその結果が発表されました。

質疑応答では、参加者から以下のような質問が寄せられました。

・急ブレーキが多発している場所は?

 見通しの悪い交差点や、歩道と車道の境界部分で急ブレーキの頻度が高いことが判明。

・一般の自転車のデータとも比較できるのか?

  今回はシェアサイクルのデータを活用したが、今後はより多様なデータを組み合わせることで精度向上を図る予定。

また、出席したシェアサイクル事業者からは「データを活用してポートの最適な配置を考えることができるのではないか」という意見も挙げられ、今後の都市計画への応用が期待される内容となりました。

今後の展望

本プロジェクトでは、シェアサイクルの走行データを活用し、自転車通行空間の利用実態を詳細に分析しました。従来の⼿作業による調査と異なり、現地に赴かなくても調査が可能なこと、調査地点や調査期間についての選択の幅が広がることなど、データ解析技術を活⽤することの利点を⾒出すことができました。

本プロジェクトを通してGPSデータを用いた新たな調査手法が確立されつつあり、今後の都市計画や交通施策に役立てることが期待されています。今後も名古屋市と様々な企業が協力し、安全で使いやすい道路空間の実現のため、検証を進めていきます。