観光文化交流局 MICE推進課 × 東海テレビ放送株式会社・株式会社アドインテ
成果報告レポート

1. プロジェクトの背景・課題
ポートメッセなごやでは、展示会やコンサートなどの大規模イベント開催時に、特定のトイレや飲食店に利用が集中し、長時間の行列が発生するという課題がありました。本来は館内外に複数のトイレが設置されているものの、視認性や認知の問題により一部に偏って利用されている状況でした。

この課題を解決するため、AI・IoT技術を活用し、混雑状況をリアルタイムで可視化。来場者が分散して施設を利用できるよう促す仕組みを検証しました。
2. 社会実証の内容
本実証では、東海テレビ放送株式会社がプロジェクト全体の企画設計と周知を担当し、株式会社アドインテが提供する高機能ビーコン「AIBeacon」を用いた混雑状況のリアルタイム可視化を実施しました。

AIBeaconは、周辺のスマートフォンのWi-Fi信号を検知して人数を推定するセンサーデバイスで、専用アプリ不要・非接触型であることが特長です。これを施設内外の複数トイレに設置し、混雑度に応じてWebサイトやサイネージ上で「空き/混雑」の情報を表示しました。

また、混雑状況を表示するWebサイトへ誘導するため、ポスター・中吊り広告・サイネージなどを活用し、来場者の目に届きやすい導線を設計しました。

3. 検証結果・効果
本実証では、リアルタイム混雑表示が現場における行列分散に寄与し得るかを検証しました。
AIBeaconによって収集された混雑データと、スタッフによる目視調査を重ね合わせることで、ビーコンが検出した人流の波形と実際の混雑状況が一致することを確認しました。これは、ビーコンの設置距離や感度、閾値設定を段階的に調整しながら最適化を図った結果です。

加えて、当初はQRコードやLINE登録を通じて混雑情報をWebで提供する方式を試みましたが、アクセス率の低さから途中でサイネージを活用した直接表示に切り替えました。この切り替え後、来場者がサイネージに表示された混雑状況を確認し、空いているトイレへ移動する行動が一部で確認されました。

一方で、「既に並んでいる」「寒い場所には行きたくない」などの理由から、情報を見ても移動を選ばない来場者も一定数おり、情報提示だけでは十分な行動変容が起きないこともわかりました。
今回の検証を通じて、リアルタイム人流データを用いた施設混雑の可視化が、施設利用の最適化や快適性向上に一定の貢献を果たしうることを確認しました。
4. 今後の展望・課題
今回の実証では、AIBeaconを用いたリアルタイム混雑可視化の有効性を確認しました。今後は、人流データを蓄積・分析することで、混雑発生の予測や施設運営へのフィードバックにつなげていく展望があります。

一方で、Web導線の活用には限界があり、情報提供の方法を現地環境に適したものへ柔軟に切り替える必要があると考えています。また、来場者の行動変容を促すには、情報表示のタイミングや文言、心理的な導線設計も今後の検討課題となります。

単なる混雑緩和にとどまらず、施設全体の快適性と回遊性向上に貢献できるよう、今後も技術検証と設計改善を続けていきます。
5. 実証事業者について
東海テレビ放送株式会社
代表取締役社⻑ ⼩島 浩資
設⽴ 1958年(昭和33年)2⽉1日
本社所在地 愛知県名古屋市東区東桜一丁⽬ 14 番 27 号
https://www.tokai-tv.com
株式会社アドインテ
代表取締役社⻑ ⼗河 慎治
設⽴ 2009(平成21年)年4⽉3日
本社所在地 京都府京都市下京区新町通四条下る四条町 347-1 CUBE ⻄烏丸 7F
https://adinte.co.jp/