住宅都市局 名港開発振興課 × 株式会社ダイイチ・ヤマハ発動機株式会社
成果報告レポート

1. プロジェクトの背景・課題
中川運河や堀川周辺は、都市の水辺空間としてのポテンシャルを持ちながらも、現状では日常的な利用や観光・レクリエーションへの活用が限定的となっています。特に水上交通やレジャー用途で使用される従来のガソリン船は、騒音や排気の問題から市民生活との共存が難しいといった課題がありました。

そこで、環境負荷が低く、静音性と操作性に優れた電動推進システムを搭載したボートを用いて、水辺の活用に新たな選択肢を加える可能性を検証しました。
2. 社会実証の内容
本実証では、株式会社ダイイチが提供する電動ボートと、技術協力を行うヤマハ発動機株式会社の次世代電動操船システム「HARMO」を用い、走行実証を行いました。

操作性、騒音、排気ガスの有無といった観点に加え、観光・交通・水上レジャーとしての活用可能性を視野に、現地での体験航行と利用者ヒアリングを実施しました。


特に音環境への影響を重視し、会話が途切れずにできる静音性や、初心者でも扱いやすいスムーズな加減速性能などを評価しました。
3. 検証結果・効果
今回の実証では、水上における電動推進機の有用性を明らかにするため、航行体験・聴覚評価・操縦性・来場者の受容性の4点から検証を行いました。
まず、実際に電動ボートに乗船した参加者からは、「想像以上に静かだった」「会話が普通にできた」「においや排気がないことで快適だった」といった感想が寄せられました。これにより、電動推進機の最大の特長である「静音性」と「環境負荷の低さ」が体感ベースで伝わりやすいことが確認できました。

操縦性の面でも、「加減速が非常になめらかで安心感がある」「初めての操作でも直感的に扱えた」という声が多く、初心者や一般市民でも扱いやすいモビリティであることが分かりました。水辺を使った都市交通やレクリエーション用途としての実用性の高さが示されました。
さらに、都市部の水辺からまちを眺めるという非日常体験が参加者に新たな視点を与え、「まちを違った角度から見られる」「普段の風景が特別に感じられた」といった意見が多く聞かれました。これは、水辺空間を観光資源として活用する可能性を後押しする結果となりました。
以上の検証から、電動船は環境配慮と利用しやすさを兼ね備えた新しい水辺モビリティとして、都市のにぎわい創出や脱炭素施策にも資することが期待される結果となりました。

4. 今後の展望・課題
今回の実証により、電動推進機の導入によって水辺の活用可能性が広がることを確認しました。今後は、観光型クルーズ、水上モビリティの導入、港湾空間のにぎわい創出といった施策と連携しながら、電動船を活用した取り組みを推進していきます。

一方で、長距離運航への対応や充電インフラの整備、運航管理に関する制度的な課題も見えてきました。市民や事業者との連携、事業モデルの構築を通じて、持続可能な水辺交通の実現に向けた検討を続けていきます。
5. 実証事業者について
株式会社ダイイチ
代表取締役 服部奈緒美
設立 昭和 34年4月 13 日
本社所在地 三重県津市河芸町東千里 854-3
https://www.wan-wan.co.jp
ヤマハ発動機株式会社
代表取締役社長 渡部克明
設立 昭和 30年7月1 日
本社所在地 静岡県磐田市新貝 2500
https://global.yamaha-motor.com/jp