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衛星データとAIで“危険な盛土”を可視化する【成果報告】

住宅都市局 開発指導課 × 株式会社Solafune
成果報告レポート

1. プロジェクトの背景・課題

近年、全国で盛土の崩落事故が相次ぎ、防災上の大きな課題となっています。名古屋市においても、過去に造成された宅地周辺や傾斜地での盛土の安全性に関する関心が高まっており、早期の異常検知と現地確認の効率化が求められています。

これまでの現地調査は職員による巡回・目視確認が中心であり、対象エリアが広範囲に及ぶため、人手や時間的負担が大きく、網羅的な監視が困難でした。

そこで本実証では、「衛星データとAIを組み合わせ、広域・定期的に盛土の変化を検出できる仕組み」の有効性を検証しました。

2. 社会実証の内容

実証では衛星画像(光学画像)をもとに、株式会社Solafuneが開発したAI解析技術を用い、市内の特定エリアにおける「盛り土可能性箇所」の検出プログラムを作成しました。検出結果は地図上に可視化し、現地調査が必要なエリアを絞り込めるようにしました。

特に本実証では、「市街地」を主な対象地域としました。理由としては、盛土規制法の対象が、市街地を対象とする場合が多く、山間部などに存在している盛土よりも危険なことが多いためです。

また盛土と似た特徴を持つ公園やグラウンドを除外するために、政府のオープンデータPLATEAUを利用し誤検出の削減を試みました。最後に、目視で確認した「盛り土可能性箇所」と突き合わせることで、AIが検出した箇所の「見落としの少なさ」を確認し、精度の妥当性も検証しました。

3. 検証結果・効果

本実証では、衛星データとAI解析によって広域的かつ網羅的に盛土リスクを把握する仕組みを構築し、検出精度や実用性を評価しました。

AIが検出した「盛り土可能性箇所」の中には、これまでの目視巡回では網羅的に確認されていなかった郊外の農地転用地や、谷地形に造成されたエリアが含まれており、目視で盛土である可能性や危険性が高いとされる箇所と重なる地点も確認されました。結果として、本実証の目標値をクリアする精度が確認され、AIモデルの有効性も裏付けられました。

職員の声としても、「WEB上地図データ等に盛土が表示されているため、位置が簡単にわかり、見やすいと思う」といった反応があり、現場業務の効率化にも寄与する可能性が高いことがわかりました。

今回の検証により、従来の人手と時間に頼った方法では難しかった“面的な盛土モニタリング”の新たな手法として、衛星画像×AIの活用が有効であることを確認しました。

4. 今後の展望・課題

今回の実証では、AIと衛星画像を活用することで、広範囲における「盛り土可能性箇所」の早期検出が可能であることを確認しました。一方で、衛星データでは雲や建造物の影に覆われたエリアでは判別が難しいケースがあり、天候や地形条件によってAI精度が左右される課題も見えました。

今後は、学習データを増やしてさらなる精度向上や、職員にとって使用しやすいUIを探る必要があります。また、今回の結果は机上調査によるものであり、実際の現地状況と比較した精度は不明確となっているため、現地調査等による精度確認及び業務効率化への効果検証を行い、その結果も踏まえ、導入の検討を行いたいと考えています。防災・土地開発分野をはじめとする横展開も視野に入れつつ、引き続き都市管理におけるDXを推進していきます。

5. 実証事業者について

株式会社Solafune
設立 2020年5月
所在地 東京都千代田区丸の内二丁目 4 番 1 号丸の内ビルディング 28 階 xLINK 丸ビル内
    沖縄県沖縄市上地3-6-16
代表者 上地練
https://company.solafune.com