実証事業者 株式会社リンクアンドコミュニケーション
市担当部署 健康福祉局 健康増進課
Hatch Technology NAGOYA 課題提示型支援事業の実証について、実証の成果をまとめた記事になります。
1.プロジェクトの背景・課題
20~60歳代は、生涯にわたって健康状態に最も大きな影響を与える期間であり、この間に身につけた生活習慣が、退職後の健康状態を大きく左右する。しかしながら、現実には仕事や子育てに追われて自身の健康に配慮が難しい人も多い。令和4年度に実施した市民アンケートでも、男性は50歳代以下、女性では40歳以下の世代で健康に関心の薄い人の割合が多いことが分かっている。
名古屋市の、健康なごやプラン21(第3次)では健康経営の推進を重点課題に設定している。しかし、健康経営に対する企業側の意識も高まってはいるものの、未だ多くの中小企業においては取り組みが進んでいない。健康経営に関心がない、関心はあるが取り組み方がわからない企業(特に中小企業)に対するアプローチが求められる。
また、企業にとっては、健康経営を実践するための具体的な方策を事項ごとに自前で用意することが困難で、それが原因で取り組みが進まない場合も多い。健康経営に取り組む企業に対して、課題ごとの支援メニューを提供できる体制の整備も必要だと考える。
そこで、今回の実証実験では、自治体の健康経営支援におけるICTツールの活用方法やその有効性の検証を行うこととした。
2.社会実証の内容
11/20~12/22までアプリを活用して「歩数」や「食事改善」の取り組みを行い、その結果を各社に報告書(全40P)として提供。自社の課題把握などPDCAの一助にしてもらう。
取り組みには、健康経営に関心のある企業15社、従業員281名が参加。
「カロママプラス」アプリを活用し、歩数や食事記録をAIで分析。一人ひとりの状況に応じたアドバイスを提供。
3.検証結果・効果
①参加者の健康増進
参加者の歩数が平均23%増加、健康スコアも30%向上した。野菜摂取量は1日60g、果物摂取量は1日20g増加。約90%の参加者がアプリ利用で健康意識に変化を感じたと回答した。
②企業の健康経営課題の把握
イベントについては参加企業の80%が満足と回答。歩数や健康状態の見える化が評価された。一方で健康意識の低い従業員への働きかけ方等、課題も見えてきた。
企業として健康経営に取組む中での課題としては、ヘルスリテラシー/デジタルリテラシーが低い方への対応や何をしたら良いかわからないという回答に票が集まった。名古屋市健康増進課はきちんと企業の抱える課題を捉えていたことがわかる。
4.今後の展望・課題
アプリは先進的で素晴らしいツールではあるが、健康経営で活用できるツールの1つ。
企業をその気にさせ、かつツールの活用を推進する体制があって健康経営は加速する。
今回の実証実験を通じて、健康管理アプリを上手く活用することで従業員の健康意識の向上が図られることがデータ分析の結果からもわかった。
こうしたツールが企業の健康経営の推進に有効な選択肢であることが確認できた一方で、従業員が主体的に健康づくりに取り組めるよう促すためには、単にアプリを導入するだけなく、経営サイドや社内の福利厚生担当、さらにはアプリサービス提供企業側が、今回の実証実験で実施したイベントのような工夫やサポートを行うことが重要だと感じた。
また企業担当者のアンケートにもあったが健康へ意識が向きにくい若年層や、ヘルスリテラシーの低い人達の意識を上げていくには様々な種類のサポートメニューや方法が必要なのかもしれない。今回使用したアプリ「カロママプラス」は先進技術も多く搭載したユーザービリティの高いアプリで、健康経営にも有効であることが確認できたが、このアプリをはじめ世の中には様々な健康経営支援サービスがある。
健康増進課としては、「健康なごやプラン21(第3次)」に基づく健康経営の推進に向けて、市内の事業者が、それぞれの状況・課題に応じて、必要なサービスを見つけ活用していただけるような仕組みを、様々な企業と連携しながら構築していきたい。
5.実証事業者について
株式会社リンクアンドコミュニケーション
代表取締役社長 渡辺 敏成
設立 2002年7月25日
本店所在地 東京都千代田区