AI・音声解析など、新しい技術で特殊詐欺被害に立ち向かいたい!

要点

解決したい課題

家族などの周囲の見守りにより、特殊詐欺の被害をなくしたい

想定する実証検証

AIによる音声解析などを利用して詐欺電話をリアルタイムで検知し、本人や家族などに通知することで、特殊詐欺被害防止効果を検証

実現したい未来

名古屋を特殊詐欺被害のない、安心・安全なまちにしたい

得られる物

音声解析の精度検証や実際に利用したユーザー(市民)からのフィードバック 、サービスの認知向上が期待できます。


ストーリー

・皆知っている、けれど減らない特殊詐欺被害

特殊詐欺とは、電話をかけるなど被害者と対面することなく信用させ、現金やキャッシュカードなどをだまし取る犯罪のことです。近年ますます手口の巧妙化・多様化が進んでいます。

名古屋市内においては、2020年における名古屋市内の特殊詐欺認知件数は244件、被害金額は約5億6千万円となっています。前年度と比較して認知件数は減少しているものの被害総額は増加しており、依然として多くの被害が発生しています。
また、手口は多様化・巧妙化しており、オレオレ詐欺が21%、預貯金詐欺が39%、架空料金請求詐欺が15%、還付金詐欺が5%、キャッシュカード詐欺盗が19%となっています。

【名古屋市内の特殊詐欺の状況】

特殊詐欺は1人で何千万の被害にあったというケースもあり、被害金額が甚大であることはニュース等でよく報じられていますが、被害は金銭だけではありません。
被害が発覚した後、家族や人間関係の悪化につながったり、心身に不調をきたしたりする場合もあります。
被害者の中には、家族をかたる人物から「会社の金を使い込んだ」や「事故を起こして人を死なせてしまった」と言われ、家族を助けたいという心に付け込まれ被害にあってしまった方もいます。被害発覚後、良心につけこまれた憤りや、家族からの非難、「だまされたほうが悪い」という世間の風潮などから、自己嫌悪に陥り自殺に追い込まれたという二次被害も発生しています。

・8割以上が自分は被害にあうと思っていなかった

愛知県警が行った2020中の愛知県内の被害者へのアンケートによると、80%以上の方が被害にあうまで「自分は被害にあわない」「考えたこともない」と回答しています。
聞いたことがある「ダマしの手口は?」という項目では、「息子などを騙り現金を手渡しさせる手口」は92.4%と高い認知度でした。それでも、2020年中に名古屋市では、約1億7,000万円もののオレオレ詐欺の被害が発生しました。
犯人は言葉巧みに不安や心配をあおり、正常な判断ができないような心理状態に陥れてきます。他にも、警察や弁護士、金融機関の職員など複数の役割を使い分けて「本当のこと」と信じこませるなど、様々な手を駆使してきます。
手口は知っていたけど騙されてしまった、そんな被害者もあとを絶ちません。

その他の手口では、「キャッシュカードを保管するようにと封筒に入れさせ隙を見て別の封筒とすり替える手口」は37.3%、「有料サイト未納料金等の名目として電子マネーの購入やコンビニ決済をさせる手口」は33.5%と、半数以上の方がこの手口について把握しておらず、すべての手口を知っていた方はわずか13.8%という結果でした。
キャッシュカードをだまし取る手口では、電話をしている最中にキャッシュカードを取りに来るなど、冷静に考える時間を与えないようにしてきます。

対策をしても、また新しい手口が…

こうした背景の中、市では特殊詐欺被害防止のため、広報車での周知や啓発チラシなどの配布、新たな手口が確認された際は名古屋市公式LINEで発信するなど様々な啓発を行ってきました。また、警察・銀行などでも様々な啓発や対策を行っており、官民一体で被害防止に取組んでいます。しかし、次々と新しい手口が発生することや、直接現金等を受け取りに来る「受け子」に比べて、実際に電話をかける「掛け子」は捕まりにくいことから、被害がなかなか減少しません。

新しい技術で、被害を防ぐ

こうした現状も踏まえながら、私たちは従来の取り組みにとどまらない、特殊詐欺被害を防止できる可能性を協議してきました。その中で、例えばAIといった新たな技術を使って通話内容などをリアルタイムで音声解析し、詐欺の可能性がある場合に本人や家族などに通知できると、詐欺被害を未然に防げるのではないかと考えています。
今回の実証実験では、上記のような新たな技術を用いた取り組みが実際にうまく機能するのかを小さく検証し、その結果がよい形となれば、ぜひ全市的な取り組みとして展開をしたいと思っています。

犯罪者を捕まえて犯罪を減少させるのが一番です。被害にあわないためには一人一人が意識を高め、自身を守る行動をしておくことも重要です。しかし、特殊詐欺被害者は自分が被害にあうと思っていないが大半であり、犯人は様々な手法を駆使して騙そうとするため、個人へ注意を呼び掛ける啓発活動だけでは限界があります。また、多発しているキャッシュカード詐欺盗は、被害者が自宅から出ることなく犯罪が行われるため、家族や親族といった周りの人間が気づく機会があまりありません。
そのため、特殊詐欺が疑われる電話がかかってきたら周りの人に犯罪に気づく機会を提供し、見守りや声掛けによって被害を阻止できるような仕組みづくりをすることが重要です。

特殊詐欺には個人でなく、家族など複数人で対策をすることが効果的です。大切な家族を自分たちで守れるような新たな技術のご提案をお待ちしています。
特殊詐欺による悲惨な被害を防ぎ、安心・安全な名古屋の実現を目指しましょう。


募集要項

背景
2020年における名古屋市内の特殊詐欺認知件数は244件、被害金額は約5億6千万円となっています。前年度と比較して認知件数は減少しているものの被害総額は増加しています。特殊詐欺の手口はますます高度化・巧妙化しており、依然として多くの被害が発生している。
課題
これまでも、特殊詐欺の被害を防止するため、新しい手口の周知などの啓発を行ってきました。しかし、特殊詐欺の被害者の80%以上は、被害にあうまで「自分は被害にあわない」「考えたこともない」と回答しています。単に個人へ注意を呼び掛ける啓発活動だけでは限界があります。家族など周囲の人たちの見守りにより、被害を未然に防ぐ仕組みが必要である。
求める解決策
AI等の新しい技術を使って通話内容などをリアルタイムで音声解析し、詐欺の可能性がある場合に、本人や家族などに通知することで、詐欺被害を未然に防げるようにする。
想定する実証実験内容
モニターとなる市民を募り、実際にツールを使ってもらう。音声解析の精度や、通知を受けた後の対応(確認・声掛け)に関する効果など、特殊詐欺の被害防止効果を検証する。
実証実験成功後の発展性
全市的な取り組みとして展開を想定。
提案企業に求める専門性
音声解析や電話回線などの通信システムのほか、通話内容などを記録することに対する法務面での知識もあると良い。
プロジェクトの進め方・打ち合せ方法
できるだけ理想の形にできるように、情報共有は密に行いたい。オンライン会議も可能。
提供可能なデータ・環境等
実証に参加いただける市民の募集などの協力を想定。
プログラム終了後の本格導入
予算化の上、全市で本格的な展開を図りたい。