公共空間を快適な状態に!先進技術を活用した放置自転車撤去スキームの構築
要点
自転車の放置認定を遠隔でも行えるようにすることで、業務量を削減しながら、放置自転車の撤去を臨機応変に実施できるようにしたい。
ICTICTを活用して放置認定を遠隔実施する。(対象エリアは名古屋駅周辺を想定) 収集したデータから今後の撤去業務の効率化に向けた分析を行う。
蓄積された撤去撤去記録から最適な撤去計画を導き出し、放置自転車のない快適な公共空間が確保された安心・安全なまちナゴヤとする。
・名古屋市との協働の実績
・自治体業務への先進技術導入の実現性検証
・他の自治体の放置自転車対策事業への水平展開の可能性
ストーリー
公共空間を快適な状態に!先進技術を活用した
放置自転車撤去スキームの構築
放置自転車をなくして、道路・公園・駅といった公共空間を
人々が利用しやすい快適な状況に保ちたい!!
いま注目を浴びている自転車、でも…
自転車は、健康的で経済性に優れ、環境に優しく、機動的で、だれでも手軽に乗れる身近な乗り物として人々に馴染んでいます。新型コロナウイルス感染症対策として、混雑する公共交通機関から自転車へシフトする人々の動きもみられます。
しかし、その手軽さゆえに、鉄道駅などを中心に自転車が放置される現象が起きており、通行する人々の妨げとなり、また、まちの景観を損ねてしまっています。
(ちなみに…放置とは、公共の場所において、自転車が置かれ、かつ、利用者がその自転車を離れてすぐに移動することができない状態のことを言います。「ちょい置き」もその場所を離れていれば放置になります!)
そうした状況を解消するために、計画を立てて定期的に放置自転車の撤去を行っています。
撤去の実態
放置自転車の撤去は、土木事務所の職員と委託した業者で行っています。土木事務所の職員が共に行うのは、放置の判断については行政権限を持つ市職員が実施する必要があると考えているためです。計画を立てて定期的に現場に赴き、数時間かけて委託先事業者とともに活動をしています。
名古屋市における自転車等の放置台数は約1万2千台/日あります。鉄道駅の周辺に放置されることが多いですが、都心部における店舗やオフィス棟の建物前など、自転車駐車場の不足している箇所の路上に放置されている事例も見受けられます。
現在、市内102箇所の駅周辺を自転車等放置禁止区域に指定しており、放置禁止区域内に放置された自転車は直ちに撤去を、区域外に放置された自転車は注意札の取り付け後7日経過してもなお放置されている場合に撤去をしています。
昨年度の撤去台数は約3万3千台で、放置台数・撤去台数ともに過去のピーク時と比較すれば大幅に減少はしてきていますが、近年、放置台数が横ばいなのに対して、撤去台数は減少傾向にあります。
この理由として、名古屋市の撤去スキームが定期的であるために、放置する人々にとって撤去されるタイミングが予想しやすくなっている可能性があります。
毎日のように撤去することができれば放置自転車が減ることは想定されますが、道路・河川・公園の維持管理など幅広い分野の業務を行い、年間6万件のご意見が市民の皆さまから寄せられる土木事務所が放置自転車対策だけに集中対応するには限界があります。
放置の判断(放置認定)のほとんどは「見ればすぐにわかる」レベルのものですが、そのために市職員が毎日様々な現場まで移動して対応し続けることはできません。
いかに効率的・効果的な撤去計画を立てるかが課題ですが、いつどこで放置が多くなるかは長年の経験に頼る部分もあり、担当職員の育成にも時間がかかります。変化をつけたり回数を増やしたりと工夫をしており、自転車マナーの啓発にもなるようにより効果的な方法を模索していますが、抜本的な解決にはいたっていません。
ICT技術の活用が撤去スキームを革新する!!
私たちは、昨年、一昨年と放置認定を遠隔で行う実験を実施しました。動画や写真によって放置認定を行うことは物理的には可能でした。
しかし、現場の具体的な位置の把握や、現場にいればすぐにできるはずの動画による認定行為、職場に配備されたパソコンによる写真のデータ収受、遠隔認定により実施した撤去情報の集計などに時間を要してしまい、データのリアルタイムでのやりとりや事後の情報処理については課題が残り、あまり効率化されませんでした。
しかしながら、放置認定を遠隔で行うことには様々な可能性があります。放置状況を記録するための写真撮影は従前からしているので、委託先事業者が撮影した写真を事務所にいる職員が即座に確認することができれば、担当職員の移動時間がなくなり、異なる現場の放置認定を同時に行うこともできます。
放置状況の写真から、位置情報や画像解析によって日時や場所、天候、放置台数、自転車の色・形式などの情報を自動で記録・集計できるようになると、事務量も軽減します。記録・集計したデータが蓄積されれば、AIによるエビデンスに基づいた効率的・効果的な撤去計画を導き出すこともできるかもしれません。
撤去スキームを効率化することで、市民の皆さまのもっと身近な困りごとを解決する時間と予算を確保することもできます。
通信技術や画像認識、AIの技術が発展し、機器も普及してきた今こそ、アイディアと先進技術を上手くパッケージにして撤去スキームを革新するときです!
この実証実験がナゴヤのまちを変えるきっかけになる!!
ICT技術を活用した撤去スキームにより、撤去することによる即時的な解決を図るだけではなく、啓発により放置が発生すること自体を未然に防ぐことのできる状況にしていきたい。
放置禁止区域内に自転車を放置するとすぐに撤去される、自転車は自転車駐車場に止めるもの、という意識を利用者に持ってもらい、道路・公園・駅といった公共空間に放置自転車がないまちをつくっていきたい。
今後、現在は一部分しか指定されていない栄地区の放置禁止区域拡大を進めていく予定です。栄地区には非常に多くの放置自転車がありますが、新しい撤去スキームを活用して対策を強化することができれば、名古屋随一の繁華街である栄地区の街の様子を変えることができるかもしれません。
まち歩きがより安心・安全で快適、楽しいものになれば、ナゴヤがさらに賑わい、おもしろい街になっていきます。ナゴヤのまちを変えるインパクトを秘めたこの事業に、私たちと一緒に取り組んでみませんか?!
募集要項
- 背景
- 名古屋市では、住民の良好な生活環境を守るため、条例により自転車等放置禁止区域を指定しており、区域内に放置された自転車等を即時撤去の対象として、計画を立てて定期的に撤去業務を行っている。 放置自転車の台数はピーク時の64,362台(昭和62年)から12,171台(令和元年)へと減少しているものの、名古屋駅には500台近くの放置自転車があり、通行の障害となったり、景観を損ねていたりする状況が見受けられる。 放置自転車の撤去は、作業の一部を業務委託しているが、「名古屋市自転車等の放置の防止に関する条例」に基づいて行う放置認定業務については、公権力の行使にあたるため市職員が実施している。今後、都心部である栄地区の放置禁止区域指定・拡大や有料化を検討していくなかで、限られた人員・財源の中でいかに効率的・効果的な放置自転車の撤去業務を行っていくかを模索している。
- 課題
- 放置自転車の撤去業務については、市職員による放置認定と委託先事業者による撤去作業がセットになっていることから、担当職員が撤去作業時に毎回現場へ出向かざるを得ず、委託することの効果を活かしきれていない。 また、近年、自転車の放置台数はほぼ横ばいにもかかわらず、年間の撤去台数は減少してきている。名古屋市の撤去スキームが定期的であるために、放置する人々にとって撤去されるタイミングが予想しやすくなっている可能性があり、現状分析に基づいた効率的・効果的な撤去計画が作成しきれていない。
- 求める解決策
- ・ICTを活用して放置認定を遠隔実施することも可能とすることで業務効率化を図る。
・放置の状況を記録する写真データから日時や場所、放置台数の情報を自動的に整理・蓄積する。
・収集したデータから今後の撤去業務の効率化に向けた分析を行う。 - 付加的・発展的な要素
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蓄積した過去の放置状況、撤去情報を元に、放置状況を予測した最適な撤去計画をの作成するツールを開発し、より効率的・効果的な撤去を実現する。
- 想定する実証実験内容
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名古屋駅周辺エリアで、中村土木事務所と委託事業者に協力してもらい、タブレット端末を導入して放置認定の遠隔実施を1ヶ月程度試験運用する。
また、端末により記録された放置状況の写真データを基に、いつ、どこで、何台の自転車を撤去したかの情報を自動的に整理して、情報を蓄積する。可能であれば、蓄積されたデータから、放置の状況を予測して撤去計画を作成できるツールの開発析についても検証する。 - スタートアップに求める専門性
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・放置状況を撮影した写真の画像解析により、自動的に日時や場所に加えて可能であれば天候、放置台数、自転車の色・形式などを認識する技術を持つこと
・委託先事業者と市役所の間で、スムーズに情報共有、撤去認定を伝達できる技術を持つこと
・蓄積したデータを分析して、放置状況を予測する技術を持つこと
・放置自転車対策のノウハウを有しているとなお良い - プロジェクトの進め方・打ち合せ方法
- 事前の打合せを現場の職員も交えて行い(オンライン会議応相談・現場視察希望)、実証については、ある程度の回数を重ねて改善を図りながら、効果を検証していく。
- 提供可能なデータ・環境等
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・これまでの撤去業務における台数などの実績
・実証実験をする活動場所(放置禁止区域内の道路等)
・撤去業務における委託先事業者の協力 - プログラム終了後の本格導入
- ・来年度以降も継続して放置認定を遠隔実施することの効果を検証したうえで、次期撤去作業委託(令和5年度~)への反映を検討する。