犯罪予測による防犯ボランティア活動の最適化-日本一安心・安全なまちナゴヤを目指して-
要点
刑法犯や市民の身近で発生する10罪種中8罪種の認知件数が政令指定都市ワースト2位。犯罪を減らすため地域の防犯ボランティア活動をサポートしたい。
過去の犯罪発生状況などを基に今後の犯罪発生を予測し、防犯パトロールのルートや防犯カメラの設置場所を最適化する。
地域一丸となった防犯対策によって、犯罪を減らし、名古屋を”日本一安全・
安心に生活できるまち”にしたい。
防犯は全国共通の課題です。本事業での成果を他の自治体でも展開することが期待できます。
ストーリー
犯罪予測による防犯ボランティア活動の最適化-日本一安心・安全なまちナゴヤを目指して-
政令指定都市ワースト1位返上を目指して
2011年当時。名古屋市の刑法犯認知件数は、政令指定都市の中でワースト2位でした。中でも、市民の身近で発生している、強盗、恐喝、自動車盗、オートバイ盗、自転車盗、部品ねらい、車上ねらい、ひったくり、自動販売機ねらい、住宅対象侵入盗の10罪種のうち、ひったくり、住宅対象侵入盗、自動車盗、車上ねらい及び部品ねらいの5罪種の認知件数は、政令指定都市中ワースト1位。
そこで、名古屋市では政令指定都市ワースト1位を返上し、安心して暮らせる安全な街を目指して、市、市民、警察が連携し、これらの罪種を中心に集中的な犯罪抑止対策をスタートさせました。
地域の防犯ボランティア活動を支援、犯罪削減を目指す
防犯まちづくりの推進には、地域住民による防犯ボランティア活動、自治体、警察が連携することが重要です。
とくに力をいれてきた地域住民による防犯ボランティア活動は、防犯パトロールや子どもの見守り活動、地域住民への啓発活動など多岐にわたります。こうした活動は、地域による監視の目を増やし、犯行を思いとどまらせるために非常に有効です。また、地域住民の防犯意識を高めることにつながるため、住民一人ひとりの防犯対策をとるようになり、地域全体としての防犯力を向上させることができます。
これまで、名古屋市では、キャンペーンなどの啓発活動やパトロールなどの地域の防犯ボランティア活動を支援するため、啓発物品の提供や防犯ボランティア活動の担い手の養成を行ってきました。また、地域団体が防犯カメラを設置する際の補助金を設け、ソフト・ハード両面から地域の防犯ボランティア活動の支援をしてきました。
その結果、名古屋市内の刑法犯認知件数は年々減少。2019年には、2011年に比べて、約6割減少しました。また、政令指定都市ワースト1位だった5つの罪種については、2012年には車上ねらいとひったくり、2013年には部品ねらい、2018年には自動車盗、2019年には住宅対象侵入盗の認知件数と、政令指定都市ワースト1位をすべて返上することができました。
政令指定都市ワースト1位を返上することはできましたが、刑法犯認知件数は、まだワースト2位。10罪種のうち8罪種も政令指定都市ワースト2位。2019年に行ったアンケートでは、約7割の人が「犯罪被害への不安を感じる」と回答しており、未だ十分な安心感は得られていない状況で、これからも粘り強く防犯活動を続けていく必要があります。
持続可能な防犯ボランティア活動の必要性
犯罪の抑止に欠かすことができない地域住民の防犯ボランティア活動ですが、活動に参加する人、活動ができる時間などリソースは限られています。担い手不足などの理由により、解散を余儀なくされる団体もあります。
防犯ボランティア活動は、自治会・町内会や学区連絡協議会(※)が中心となった、地域密着型の活動が大半です。参加者の年代は、一般的に中・高年が多く、参加者の高齢化が担い手不足の要因になっている団体もあります。
名古屋市では、地域の防犯ボランティア活動を積極的に行ってくれる人材を養成するために、「防犯リーダー養成講座」や「防犯ボランティア入門講座」を開催してきました。また、地域で行っている防犯パトロールへの大学生の参加を呼び掛けることで、次世代の育成にも取り組んできました。
※学区連絡協議会とは、民生・児童委員、保健環境委員、女性会、老人クラブ等を構成員とした協議組織。小学校区単位に設置され、住民相互の交流などのコミュニティ活動の中心的な役割を担っている。
警察庁の発表によると、2003年に3,056団体だった全国のボランティア団体は、2016年の48,160団体にピークを迎え、ここ数年は減少傾向にあります。今後、持続可能な防犯ボランティア活動に向けて、参加者の負担を軽減しつつも活動の効果を高められるような、新しい支援が必要です。
日本一安心・安全なまちナゴヤを目指して
地域一丸となった防犯対策で、犯罪を減らし、「日本一安心・安全なまちナゴヤ」を一緒に目指しましょう!
募集要項
- 背景
- これまで、町内会・自治会等の地域における防犯パトロールや防犯カメラの設置などソフト・ハード両面の支援をすることで、街頭犯罪の抑止に取り組んできた。しかし、2019年の名古屋市内の刑法犯認知件数は、20,221件であり、市民の身近で発生する10罪種(※)のうち8罪種が政令指定都市ワースト2位の状態にある。 ※強盗、恐喝、住宅対象侵入盗、自動車盗、オートバイ盗、自転車盗、部品ねらい、車上ねらい、ひったくり、自動販売機ねらい
- 課題
- 名古屋市内の刑法犯認知件数は減少傾向にある。しかし、他都市と比べると多発している。市民に対するアンケートでは、約7割の人が「犯罪被害への不安を感じる」と回答しており、市民生活への不安は未だ解消されていない。 これまでも、地域住民、警察、名古屋市等で連携しながら、犯罪抑止に取り組んできたが、地域における活動の担い手不足など、限られたリソースの中で、効果的な防犯活動を行う必要がある。
- 求める解決策
- 過去の犯罪発生状況などを基に、発生が予測される罪種や地域等を分析。パトロール経路を地域の防犯ボランティア団体や警察に提案する仕組みを構築し、重点的なパトロールや注意喚起などに生かすことで、防犯ボランティア活動の効果を高め、犯罪の防止につなげる。
- 付加的・発展的な要素
- 全市的な取り組みとして展開をしたい。
- 想定する実証実験内容
- モニターとなる区(もしくは小学校区)において、過去の犯罪データを解析して、最適なパトロールを提案。地域の防犯ボランティア団体や警察と連携をしながらパトロールを実施する。
- スタートアップに求める専門性
- ・予測に必要な犯罪情報のインプットの頻度
・持続的に活動ができるような防犯ボランティア団体へのパトロール経路などの情報提供の頻度・時間帯
・予測情報を悪用されないような公開範囲
などに関する、実践的なノウハウ。 - プロジェクトの進め方・打ち合せ方法
- オンライン会議も利用しながら情報共有は密にしたい。
(オンライン会議の対応は、チャットであれば随時可。Zoomなどの映像有の場合は、対応できる端末が限られるため、時間が合えば可能。) - 提供可能なデータ・環境等
- 犯罪の発生場所、時間、被害者の属性(年齢、性別)の提供が可能。また、実証実験のフィールドとして地域の防犯ボランティア団体の紹介を検討。
- プログラム終了後の本格導入
- 実証実験の結果次第では、予算化の上、全市で本格的な展開を図りたい。